2006/05/21

携帯電話とすれ違い

 かつての人気ラジオドラマ「君の名は」を出すまでもなく、恋愛ドラマを盛り上げる要素として、好き合っている男女のすれ違いがある。聞いている者、観ている者、読んでいる者をやきもきさせるのが、ドラマに引き付けるのだろう。

 しかし最近はこうしたすれ違いは、なかなか成り立たなくなってきた。携帯電話が1人に1台普及しているからだ。
 携帯電話があるにもかかわらず、好き合う二人がすれ違うなんてまず考えられないからだ。非現実的なのである。

 しかしつい最近まで、こうしたすれ違いドラマは存在したし、人気を博した。
 たとえば鈴木保奈美と織田裕二が演じたドラマ「東京ラブストーリー」も、そのひとつだろう。

 先日これをスカパーで観たというある人は「すれ違いのシーンの多いこと。携帯が普及している時代にはありえないストーリだな、と思って、観ていました」と言っている。
 このドラマは、小学館「ビッグコミックスピリッツ」で連載された紫門ふみの漫画。が原作で、1991年1月7日から3月18日にフジテレビ系でテレビドラマとして放送され、大人気になった。

 もちろん人気になった理由はすれ違いにあったようだ。携帯電話も普及していなかった時代だったからだ。せいぜいポケベルがあった程度で、一方ではポケベルが鳴らなくて?といった、ポケベルで連絡を取り合う恋愛ドラマが話題になっていた頃だ。

 今は携帯電話もドラマでごく自然に使われている。しかしこの”小道具”は、すれ違いをなくしてしまったけれども、嫌いなヒトからの電話は無視する着信拒否も堂々とできるようにした。携帯あるがゆえに逢えない、といった事態も起こりうるのだ。

 これがまたストーカーなどを発生させるなどしい事件を巻き起こしている。そこに新たなドラマが出来る要素はあるのだが。