人気のiPhone 3G 国内スマートフォン市場を再構築するのか
★全体では市場の盛り上がりを欠くスマートフォン ドコモはスマートフォンに消極的?
このところ日本の通信事業者からも相次いでスマートフォンが発売されているが、依然として日本のスマートフォンユーザーは特化したモバイルユーザーに限られているようで、スマートフォン人気は低調気味のようだ。
7月11日にソフトバンクモバイル(SMB)から発売された「iPhone 3G」は市場に大きな話題を投げかけたが、それでもまだモバイルユーザーとモバイルミュージックユーザーが中心の商品のように思われる。日本の携帯電話トップシェアを持つNTTドコモは、依然として個人市場へのスマートフォンの導入については慎重だが、iPhone 3Gに触発される形で、先頃ようやくカナダ製の人気スマートフォンを個人市場へ向けて販売すると発表したところだ。
iPhone 3Gの発売は、日本の携帯電話市場に黒船到来を告げる出来事とも言われる。しかし今尚、日本市場は、子供の玩具のような携帯端末を提供し続けようとしており、普及が進んだ携帯市場を低迷させる一因を作っている。スマートフォンが、その轍を踏まないことを願う。
★全国の量販店でiPhone 3G発売記念イベント
SMBが、7月11日正午、スマートフォン「iPhone 3G」(アップル製)を全国一斉に発売した。大阪市北区のヨドバシカメラマルチメディア梅田では、1番のりした26歳の男性は、うれしそうにiPhone 3Gを手にしてしていた。
発売を記念して同社はビックカメラ有楽町店、ヨドバシカメラマルチメディアAKIBA、同梅田の3ヵ所では、ゲストを招いて記念セレモニーを開いた。
大阪市北区のヨドバシカメラマルチメディア梅田店頭の特設会場には、同店の北沢澄夫取締役店長、SMBの富田克一副社長、TVCMで白戸(ホワイト)家の長男役として出演しているダンテ・カーヴァーさんが、詰め掛けた観客と一緒に正午からの発売開始のカウントダウンして、販売を盛り上げた。
SMBの富田副社長は「iPhoneで携帯電話の新しい時代を拓いていきたい。今年をモバイルインターネットマシン元年としたい。この商品はインターネットの世界を持ち歩くまったく新しい商品。市場が大きく広がっていくことだろう」と、期待を寄せていた。
確かにこのセレモニーは、新しいスマートフォンiPhone 3Gの日本導入には、極めて効果的だった。
ジーエフケーマーケティングサービスジャパン(GfKジャパン)がまとめた「家電量販店におけるiPhone 3Gの販売動向」によると、iPhone 3GはSMBの販売数量シェアを伸ばし、一気に50%を獲得ししたというほどだったからだ。
11、12日のSMBの販売数量のうち67・5%がiPhone 3G(16GB+8GB合算)で占められ、全キャリア合算の販売数量でも27・4%のシェアを占めた。
また上位機種の16GBと8GBでは、16GBに人気が集中していた。これは、新スーパーボーナス24回払いを利用すると、実質的に8GBが2万3040円、16GBが3万4560円と価格差が1万1520円である点も上位モデルの購入を促したようだ。
★拡大しない日本のスマートフォン
この過熱とも思える現象は、一見すると日本もようやくスマートフォンが定着するかのようであるが、決してそうではない。この動きはiPhone 3G1機種に限定したものであるからだ。
昨日も触れているように、他のスマートフォンは相変わらずユーザーの関心は低い。
iPhone 3G発売以前からSMB、ドコモ、イー・モバイル、PHSのウイルコムはスマートフォンを発売している。小さいながらも1つの市場を形成していたが、決してメインにはなり切れない商品であった。
欧米で先行普及したスマートフォンだが、国内でもようやく使える本格的な端末として登場したのは2005年12月にウィルコムから発売された「W―ZERO3」からだった。使いやすいスマートフォンやPDAを待ち望んでいたユーザーからは、大いに歓迎された。でも欧米のように決して主流にはなり切れていないのが現状だ。
調査会社のロアグループ(東京)は、スマートフォンの出荷台数は2010年には600万台と、06年の10倍に達するといった予想している。
しかし、これは少々安直な推測としか言えないだろう。
確かに販売される端末の種類は増えているが、台数がそれに比例して伸びているとは思えない。
ドコモはiPhone 3Gに対抗するかのように、カナダのRIM社製のスマートフォン「ブラックベリー」を、従来は法人市場向け限定商品にしていたが、個人向けにも販売を始めた。
ブラックベリーは海外では人気の端末だが、国内では個人は買えなかったのだ。こうしたスマートフォンは企業向けの端末として、特殊用途の端末視している日本トップの携帯電話事業者の発想自体に、国内のスマートフォン市場が拡大してこなかった原因の一端を見ることができるようだ。
★スマートフォンの条件を備えたiPhone 3G
ところでスマートフォンとは、如何なる携帯電話なのか。再度、整理してみよう。
ある雑誌では「携帯電話機としての音声通話機能やデータ通信機能を持ちながら、パソコンに近い使い勝手を実現した携帯端末の総称。2002年ごろから欧米を中心とした普及、発展した製品分野である」と定義している。
また「スマートフォンには厳密な定義はない。当初の位置付けは”携帯電話機にPDAのようなPIM機能を持たせたもの”だったが、既に携帯電話機の多くが高度なPIM機能を持つ現在では適切な定義とは言い難い。あえて現時点における特徴をあえて挙げると次の二つになる」ともする。
そのふたつとは「(1)独自のソフトウエア・プラットフォームを持ち、アプリケーションソフトウエアを導入して機能を追加できること。(2)高度なWebアプリケーションをパソコンに近い使い勝手で実行できること」
iPhone 3Gも、ネット経由でソフトを追加できたり、書類ソフト「パワーポイント」の閲覧ができたりする。PIM情報をパソコン、とりわけマックPCとの連携も容易だ。
これからするやはりiPhone 3Gはスマートフォンと言うことになる。
このiPhone 3Gが日本のスマートフォン市場を再構築する可能性はある。それは端末を子供の玩具にせず、また一部の特化したユーザー向けの商品にしないといった条件がつく。
ウィルコムのW―ZERO3シリーズは、最新機種「WILLCOM 03」で、女性層の開拓をねらった。端末の色はピンク、ライム、ゴールドの3種類とし、大きさも手のひらサイズにしいる。さらにワンセグ用チューナーを内蔵し、ワイヤレスヘッドホンで音楽も楽しめるといった機能を盛り込んだ。
SMBの「X02NK」は、504万画素カメラやGPS機能、FMラジオを搭載している。
搭載機能を増やしたというわけだが、携帯電話のように端末が玩具化しないことをねがうしかない。