携帯電話の一番の限界 少ないリソースの増え方
◆総務省総合通信基盤局電波部の稲田修一電波政策課長が、1月27日、電波のトレンドやワイヤレスBBサービスの将来展望などについて大阪市内で講演しました。この中から携帯電話に関する話をまとめました。
NTTドコモ提供の携帯電話のデータ(パケット)トラフィック推移数字を見ると、第3世代携帯電話(FOMA)のトラフィックが大きい。PDCのパケットの約20倍の量があります。
なぜこのように使うかというと、伝送速度が速いため、たとえば音楽データのダウンロードの時間も短くて済む。そうすると誰もが気づかないうちにたくさん使うことになる。さらに定額制の料金体系が導入されたこともあって、またたくさん使うといった傾向が強まっています。
携帯電話は世界的には低価格化の流れが進んでいる。今年はアフリカでの携帯電話の普及が爆発的に伸びると見られています。それは5000円程度の端末が結構出回ってきたからです。それがもっと安くなる可能性があります。
たとえば携帯電話の主要機能をまとめた半導体を5ドル程度で作ろうという半導体メーカーも現れています。3年以内には開発されると言われています。そうなると端末価格は50ドルを切ってしまう。あるいは30ドルくらいになってしまうかもしれませんね。
◆携帯電話の使い方が変わってくる
電話やインターネットへのアクセスといった今の使い方のほか、すぐに考えられるのがガスとか水道、電気のテレメトリングをして、各家庭のデータを携帯電話のネットワークを経由して集めることが可能になります。
今は自販機にはパケット通信用の端末が付いていますが、今後はこうしたことがかなり広がっていくでしょう。
テレビのリモコンに携帯電話を入れるのもおもしろい。デジタルテレビではインターネットに接続できますが、固定回線を使っていると結構面倒です。これを携帯のパケットモードが入ったリモコンを使うと簡単にインターネット接続できるようになります。
これも携帯用半導体の価格が安くなるからです。こうなるとますますトラフィックが増えます。
◆無線LANを使ってインターネットへのアクセスがかなり一般的になってきていますが、日本では公衆無線LANはまだそれほど普及していません。世界からは少し遅れています。
米国ではホットスポットは2004年で2万ヵ所で、08年には6万ヵ所になると予想されています。また英国では05年3月に9601ヵ所、フランスは05年1月で7000ヵ所、ドイツは7600ヵ所、韓国は12000ヵ所。これに対して日本は9200ヵ所です。
諸外国が携帯電話事業者が無線LANネットワークを構築しているのに対して、日本は固定系のネットワークが中心になっているあたりにも原因があるのでしょうか。
◆移動通信の技術的トレンド
今後、携帯電話は第3世代(3G)携帯電話が高度化するシステム「高度化3G」とITU (国際電気通信連合)で検討が進められている第4世代移動通信システム「4G」、それに無線LANシステムから発展する「広帯域移動無線アクセス」があります。
高度化3Gは、現在の3G、3.5Gに対してさらに大容量化されて高速移動時でも通信が可能で、ほぼ100%全国をカバーするとしています。導入開始は2009年でしょう。
4Gは100Mbps程度の伝送速度が考えられており、高度化3G同様に全国展開と高速移動時の利用が前提となっています。導入は2010年の予定です。
広帯域移動無線アクセスは、3G、3.5Gを上回る伝送速度の周波数2.5G帯を使うことが考えられています。2007年の導入予定で、IP常時接続で最大伝送速度が10Mbps程度以上を目指しています。サービスエリアは地域を限定した導入が考えられ、中速移動での利用となるでしょう。
◆どうなる料金体系
たくさん電波を使っても料金が安いほうが望まれます。そうなるとできる限り安いシステムを導入できなければいけません。ビット当たりの伝送単価を安くする必要もあります。そういった意味で定額制の料金が安くなったり、定額制で送れる情報量が増える方向へとなるでしょう。
携帯がいろんなところへ入るようになるのに伴って、料金体系の面でもシステム料金の登場が考えられます。
ドコモがユビキタスパケット料金的なものを提供していますが、パケットの伝送量が少ない場合には800円程度の料金体系ですが、たとえばもっと少ない場合には300円でもいいんですね。テレメイリングなどの場合、相手企業と契約して1ヶ月何千万円という形態でもいいと思います。
しかしそうなると電波の過密状況はますます度を増していく。日本の電波の過密状況は米国、英国と比較してみても一目瞭然です。携帯電話の場合は基地局数が日本は93000、米国は17万6000、英国は45000で、これをそれぞれの国土の単位面積あたりの基地局数にしてみると日本は0.246と最も多く、英国でも0.185で、米国にいたっては0.018といった具合です。
このような状況を勘案して「ブロードバンド化へ向けた電波の有効利用の推進、再配分を実施する必要がある」としています。
◆モバイルブロードバンドで提供されるサービスは
今、携帯電話系のコンテンツ産業規模(モバイルコンテンツ/コマース)は9232億円になっています。携帯電話、PHSの端末市場は7829億円です。急速に拡大してきました。
しかしワイヤレスには限界があるのではないかと思っています。ムーアの法則では半導体の処理能力は5年間で10倍になると言われています。10年間では100倍になるんですね。ところが携帯電話はそうはいかない。携帯電話の周波数で単位あたりどの程度の多くの情報が運べるようになるかというと10年間で3?4倍程度ですね。とても100倍にはならない。
通常のITに比べてリソースの増え方が少ない。これが携帯電話の一番の限界でしょう。しかし無線LAN系が増えると少し変わってくるのかもしれませんが。しかし無線LANはPHSのようにエリアが狭いマイクロセルなのでシームレスサービスを展開するにはコストが高くなります。
このためワイヤレス定額制ということになりますが、電波がありません。ですからエリアを徐々に広がるようになっていくのではないでしょうか。
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