2005/07/26

携帯で避難誘導

 地下鉄の駅構内で、あるいは地下街など閉鎖された大規模空間で、ある日突然に火災などの災害に遭ったら、うまく避難することができるだろうか。今、こうした多くの施設では構内一斉放送でスピーカーを通じて、利用者を安全な場所へ誘導する方法が取られている。

 これをもっときめ細かく、安全に一人ひとりを避難させる方法として携帯電話を使った避難誘導が試みられている。先ごろ、その実験が、科学技術基本計画の中核的実施機関である独立行政法人科学技術振興機構によって、京都市営地下鉄の京都駅で行われた。筆者は実験現場へ出かけてみた。

 誰もが持っている携帯電話に、遠隔の避難誘導センターから駅構内の画像を見ながら、避難先までメールや音声で誘導しようというものだ。構内に設置した28台の広角カメラを通じて避難場所の状況を、PHSのネットワークを使ってセンターに集め、大画面のディスプレイに仮想都市として画像に再現。

 画像の中には、アニメーション化された表示避難する人の場所が表示されるので、それを見ながら一人ずつに避難先まで5秒に1回、送信されるメールで誘導した。画面の人物を触るだけで避難中の人の携帯に通じる仕組みで、状況に応じたメッセージが送られる仕組みだ。

 実験では、避難誘導を受ける携帯の電話番号はあらかじめわかっていたが、実際には改札を通る際に乗降客の携帯電話番号を、NTTドコモのFeliCa対応携帯電話「おサイフケータイ」などに用いられている非接触ICカード技術を使って読み取る必要がある。

 この技術を応用すると、GPS(全地球測位システム)を使って屋外での避難誘導にも使えそうだ。

[データ]
 地下だとGPSが使えないが、カメラ映像を画像処理して3次元の仮想空間に取り込むことで、はっきりと位置をつかめる。監視カメラの映像では施設内の全体像がわからなくなる難点があるという。